取水口

瓜生田取水口(うりゅうだ・しゅすいこう)

2級河川・市川水系に属する西光寺野大地。市川からは自然流水下での取水ができないため、支流である岡部川から非かんがい期に取水してため池に貯留し、かんがい期間に利用しています。
・兵庫県神崎郡市川町下瀬加字瓜生田壱
・播但連絡市川南ICから車で約5分

隧道(ずいどう=トンネル)

第2号隧道

老朽化により多くの隧道がコンクリート造に改修されているなか、築造当時のまま姿を残し、現在も使われている約40mの素掘りの隧道です。

第7号隧道入口・出口

保喜山の裾野を南北に貫く約500mの水路トンネルです。水が流れていない時は、隧道の中を探検することができます。トンネルの中で大きなコウモリと遭遇するかも!?

第8号隧道入口

全長約330m。約110年前の築造当時の姿を残す、煉瓦造リの隧道です。手掘リの水路を守ってきた先人たちの努力と当時の技術力の高さを肌で感じることができます。

第7号隧道入口
第7号隧道出口

水路橋

妙徳山前煉瓦水路橋(大正4年ごろ)
旧第5号水道橋、新第6号水路橋

西光寺野疏水路にある水路橋のひとつ。明治末期としてはとても高度な土木技術で小さな煉瓦を積み上げたアーチ式の橋でしたが、現在はコンクリートに改築されています。

サイフォン

サイフォンとは?

サイフォンは、地形の高低差を使い、チューブや水路で水を高い地点から低い地点へ自然に流す仕組みです。連続した水の流れが維持され、途中にポンプなどの動力は不要です。

西光寺野疏水路での役割

地形を乗り越える: 谷や小さな谷部で、わざわざ高架橋やトンネルを造らずに水を通すことができます。

効率的な導水: 重力と大気圧のバランスを利用し、シンプルかつ確実に水を遠くまで運ぶ伝統的な技術です。

西光寺野疏水路には4箇所のサイフォンが設置されています。

ため池

長池

長池は大正4年(1915)に、既存の二つのため池を統合・拡張して造られた、西光寺野地区最大のため池で、一周約2.5kmの規模を誇ります。造成時には水面に島を築き、水神として弁財天を祀りました。農業用水の要として地域を支えるとともに、景観も豊かで、周囲の農地や自然と調和した風景が広がります。

奥池

奥池は慶長年間(1596〜1614)に農業用ため池として築造され、明治・大正期に大規模拡張が行われ長池と連結されました。昭和63年の県営事業で現在の姿となり、満水面積12.1ha、貯水量50万㎡で82.3haの農地に安定した用水を供給しています。高台の堤体からは周囲を一望でき、四季折々の景観も楽しめます。

西光寺野周辺

兵庫県神崎郡福崎町と姫路市北部に広がる西光寺野周辺は、歴史と自然、そして地域の営みが融合する魅力的なエリアです。江戸末期から明治期にかけて開拓された西光寺野は、ため池群と灌漑施設により農業地帯として発展しました。その中心にある「長池」や「奥池」は、地域の農業を支えるとともに四季折々の美しい景観を楽しめる場所です。

この周辺の見どころの一つが、日本遺産にも認定された「銀の馬車道」です。明治9年(1876)に生野銀山から姫路港まで約49kmを結ぶ運搬路として整備され、馬車による鉱石輸送を可能にしました。当時の近代化の象徴であり、沿道には往時の面影を残す史跡や町並みが点在します。

また、町のシンボル的存在が「辻川山公園」です。民俗学者・柳田國男の生家が移築され、記念館として一般公開されています。園内には柳田の著作に登場する河童や天狗のモニュメントもあり、民話の世界を体感できます。春は桜、秋は紅葉が楽しめる憩いの場でもあります。

さらに、地域の特産品であるもちむぎ文化を発信する「もちむぎのやかた」も外せません。もちむぎは食物繊維やミネラルが豊富で、地元では古くから栽培されてきました。館内では生産工程の見学や、もちむぎ麺・菓子の試食、購入も可能です。

そのほか、西光寺野の周辺には、市川沿いの自然散策路やため池を巡るウォーキングコース、地元産野菜の直売所などもあり、農村の風景とともに地域の暮らしを感じられます。歴史遺産と自然、そして人々の営みが息づくこのエリアは、訪れる人にゆったりとした時間と発見を与えてくれる場所です。

工事完成後の堰埭及び取入口
大正4年の写真

当時の記録。